2019/06/27 16:08

もみ殻はただの厄介者!?



お米づくりの副産物である“もみ殻”が厄介者扱いされていることをご存知でしょうか。

・処分にコスト・労力をかけられない実情
・田んぼに混ぜたくてももみ殻には撥水性があり腐りにくいといった特性があるため、時間をかけて年単位で寝かせる必要がある
・野焼きが禁止されたことで再利用がますます難しくなった

こういった理由により、ライスセンター(や米農家さんの倉庫)などには、処分に困った大量のもみ殻が溢れています。

今までも、もみ殻の特性を活かした農作物マルチングや、ひと手間加えることでもみ殻燻炭にして肥料として使われてはいますが、
これでは発生するもみ殻に対して処理が追いつきません。



もみ殻をもっと使いやすく!

そこで、もみ殻を有効活用しやすく加工したのが「すりつぶしもみ殻」です。

加工といっても、名前のとおりもみ殻すり潰しているだけ。
すり潰し時の摩擦熱は80℃~100℃。



すりつぶしもみ殻の特徴

まずは、この写真をご覧ください。

もみ殻とすりつぶしもみ殻のそれぞれを水に入れた直後の様子です。
違いは一目瞭然。「すりつぶしもみ殻」は水に沈んでいます。

↓10分後↓

この様子は、もみ殻の特性を知っているからこそ信じられないと驚かれる方も多いのではないでしょうか。


動画はこちらからご覧ください。




「すりつぶしもみ殻」の特徴は、吸水性・保水性を高めたうえで、通気性を保っている点にあります。
ですので土に混ぜても腐りやすいです。

もみ殻は軽く、ケイ酸を多く含むことから循環利用を推奨されながらも課題も多くなかなか再利用が進んでいませんでしたが、すり潰すことでもみ殻も再利用しやすくなっているのではないかと考えています。


※20230210追記
グラインドミルで摺り潰した籾殻の特性 | 研究成果詳細 | アグリサーチャー
担当機関:佐賀県農業試験研究センター




すりつぶしもみ殻の使用方法

※さまざまな実験中です。ご参考ください。




園芸・家庭菜園の育苗に(育苗後、土へ定植)
■ヒマワリ・トウガラシでの実験 http://sagaoriza.hatenablog.com/entry/usesuritsubushimomigalaine

■スナップエンドウ(2019年)での実験 http://sagaoriza.hatenablog.com/entry/2019/02/20/142539
畑へ定植すれば問題なし

すりつぶしもみ殻だけだと保水性がありすぎると感じる場合も・・・?→注意点(後日ブログ投稿予定)



園芸・家庭菜園の培地に

■ミニトマト(2017年 すりつぶしもみ殻100%)での実験

ミニトマトは、5月の中旬に大きなプランターに植え替え、7月に入ったことから表面にカビが生えてきました。


■ひまわり(2017年 すりつぶしもみ殻100%)での実験※肥料なし

ひまわりは、植えたのが8月に入ってからで遅かったです。
真夏でもなかなか乾かなくて、水をやりすぎても枯れちゃいそう、水やりのタイミングが難しく感じました。
プランターで植物を育てるのが久しぶりだったので、外に出していてもこんなに乾かないもの???とも思ったりもしたのですが、すりつぶしもみ殻に吸水性・保水性がある証拠?
すりつぶしもみ殻と土を混ぜたほうが乾きやすいです。


■玉ねぎ(2019年 すりつぶしもみ殻100%+下水由来肥料混)での実験
相性の良い肥料を混ぜると特別手を加えなくても培地としても使えそう。



すりつぶしもみ殻培土

すりつぶしもみ殻のみだと生長がいまいちだと感じて新たに始めた実験が、ボカシ肥料からヒントを得たすりつぶしもみ殻で作る軽量培土。(培土と言いながら土は使用していません。)

プランターに入れて使うと土より軽くて良いです。




ボカシ肥料



その他:[稲作] 苗床
稲作では、
・農業従事者の高齢化や女性農業者の増加で省力化
・資材価格の高騰などで生産コストの削減
の実現が課題となっています。

こうした課題の解決策のひとつとして、すりつぶしもみ殻を使った苗床づくりのご提案もしています。
苗箱を持ち上げた経験のある方は分かると思いますが、重く、運ぶのは重労働です。
「すりつぶしもみ殻」を苗床に利用することで軽量化が可能になります。


もみ殻ですから苗床の軽量化ができます。また、土より格安のため、育苗の低コスト化にもつながります。
(すりつぶしもみ殻製造時(もみ殻をすり潰す際)に発生する高熱で雑草の発芽抑制効果も。)

すりつぶしもみ殻を苗床に使って稲作をされている農家さんは佐賀県、他県にすでにいらっしゃいます。
数件の稲作農家さん(佐賀県内)にご協力いただき、苗床にすりつぶしもみ殻をご使用いただいたんですが、
使用感(100%すりつぶしもみ殻使用)としては、
・軽くて良い
・カラスやスズメがもみ殻をつつきにやってくる
・苗の生育初期にすりつぶしもみ殻が持ち上げられてしまうのが気になる
・根はしっかり張る
・市販の土と比べると苗の色が薄く、育ちが良くないのが気になるとのことでした。

一方で、佐賀県内でもう何年も100%すりつぶしもみ殻で苗を作り、おいしいお米作りをされている方もいらっしゃいます。
その方のお話しでは、苗の育ち方は土に比べれば劣るが、 田圃に植えてしまえば、同じになるため何の問題はないそうです。

もみ殻での苗床づくりを工夫しながら続けてらっしゃる農家さんは、安全策として床土をすりつぶしもみ殻、覆土を市販の粒状培土を使っている方が多いようです。

各農家さんが試行錯誤しながらではありますが、すりつぶしもみ殻の利用は進んでいます。

2018年、地元の農家さんに使っていただいています。








その他:[稲作]田んぼのケイ酸補給
また、お米を気候変動に影響されることなく育てるのにはケイ酸はとても重要とされています。
とくにもみ殻はケイ酸含有量が多いため、循環利用が推奨されていますが、腐りにくく、土に混ぜるには長期間寝かせる必要があります。
すりつぶしもみ殻は、もみ殻に比べると腐りやすいので、田圃のケイ酸補給に利用しやすくなるのでは、と考えています。

稲作でのもみ殻活用に役立ちそうな情報はこちらの記事にまとめています http://sagaoriza.hatenablog.com/entry/aboutriceagriculture



その他:家畜の敷料
オガ粉の代替として



「すりつぶしもみ殻」を使ってみませんか

もみ殻の循環利用は、人にとっても環境にとっても良いことがたくさん。
・有機栽培の土づくり
・農業の省力化・低コスト化
・産業廃棄物処分の労力・コスト削減